あの子のために雪は降る
それから俺はノロノロと立ち上がると、すずめの容態を聞くために病院の中へ入っていった。

しかし呼び止めた看護師からは「今は面会できません。」と、あっさり断られた。
当然だな、医者も付きっきりで話も聞けないだろう。

仕方ないので俺はすずめの病室だけでも調べておくことにした。
後で来る時にまっすぐ着けるように…。


…すずめの病室は三階にあった。
303「朝宮すずめ」
そうプレートに書いてある。
ドアを開けて入ってみると、何もない殺風景な景色があった。
無菌室…そんなイメージだったが、俺は詳しくないから実際どうだか知らない。

俺は主の居ないベッドを見つめて、そこに腰を下ろした。


「お前…こんなつまらない所にいたんだな…。」


思わず口をついて出た言葉は、そんな味気ない一言…それしか思いつかない。
周りにある物は、絵本と落書き帳、子供用のスプーンだけだった。

窓から見える景色は、小学校と近くの公園。クリスマスの飾り付けをしたいくつかの店だけ。


「何故お前がここを抜け出したのか解る気がするぜ…。窓の外の景色はここよりずっと楽しそうだもんな…。」


そんな事を呟いていると、後ろのドアが開く音がした。
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