あの子のために雪は降る
俺は涙でにじむ視界を天井に移すと、看護師にバレないように元気な声を出した。


「なぁ、アイツに言っておいてくれよ!サンタさんが遊園地に連れて行ってくれるから頑張れって!」


俺はそれだけ言うと病室を飛び出した。

病気の事で俺がしてやれる事は何も無い!
親御さんを探して連れてくる事も出来ない!
だがよ、こんな俺にだってサンタくらいにはなってやる事出来るだろ!?


俺はバカだからそれくらいしか思いつかなかった。


アイツと過ごした短い時間の中で俺が解った事といえば、サンタに願う内容とハンバーガーが好きな事だけ…。

逆に言えば俺にしか叶えてやれない望みだからだ!


子供ってのは、いつかはサンタなんか居ないって気付く。
でも信じてるうちは周りの奴が叶えてやるのが思いやりって奴じゃねえか?

俺は冷めた自分の心にも、ヒトカケラの思いやりが残ってたんだと驚いた。

喧嘩なんざ幾ら強くても役に立たねえ…。
俺はこの日、自分の無力さに気がついた。
そんな自分に悔しくて、涙が止まらないまま走り続けた…。
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