あの子のために雪は降る
俺はがむしゃらに走った。
こんなに走ったのは小学校のマラソン大会以来だろう。
自分の心臓の音だけが耳障りなくらいにバクバクいってやがる。

向かった先は一番近い遊園地。
そこは動物園とくっついていて、子供用の乗り物しか無いような小さな遊園地だった。

…アイツはきっと最新のアトラクションなんかに興味は無い。
「遊園地」という場所自体に行きたがってんだ。


俺は息を切らせながら窓口に行くと、チケットを二枚注文した。

チケットは当日限り。でもそんな事は関係無い!
アイツが元気になった時、また俺が買ってやればいい。

わざわざ本物を金出して買わなくても、ガキのアイツには区別つかないかもしれない。
たけど俺はアイツに嘘はつきたくなかった!
「元気になったらお兄ちゃんと行こうな!!折角サンタさんがくれたんだしよ!」
そう約束してやりたい。

自分がサンタの真似してプレゼント渡すってのに、自作自演のいい茶番だ。
笑いたい奴は笑えばいいさ。
それでも俺は…こうでもしなきゃやりきれないんだ!


俺は窓口に金を払うと、チケットを奪い取るようにして走り去った。


「畜生!サンタの衣装なんてどこにあんだよ!」


もしかしたらアイツには時間が無いかもしれない。
俺は一秒でも早くすずめの所に戻りたかった。
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