あの子のために雪は降る
サンタの衣装ってどんな奴だっけ?
赤いパジャマみたいな服しか思いつかない。
こんな事ならもう少し観察しときゃ良かったぜ。


俺は元来た道を走りながら周りをあちこち見ていた。

陽気なクリスマスソングが流れる店、仲良く手を繋いでいる親子、肩を並べて座る恋人達…。
皆幸せそうな顔をしてる。

それはそれでいい事だ。
人間幸せになるに越したことは無い。

当然アイツにだってその権利はある。
幸せのあり方なんざ人それぞれ…。欲張りな奴もいれば、小さな幸せ一つで喜ぶ奴もいる。


きっとすずめの奴は小さな出来事一つ一つが幸せなんだろうな。
じゃないとハンバーガー1つであんな笑顔が出来るわけ無いさ。


そんな事を考えながら衣装を探していると、雑貨屋の店先にサンタの衣装を着たマネキンがあるのを見つけた。


「雑貨屋!?思い付かなかった!」


俺は店に駆け込むと、近くにいた店員を捕まえてマネキンを指さした。


「あのマネキンが着てるサンタの衣装どこにある!?」


この時の俺の顔はさぞかし怖かったんだろう…、店員はひきつった顔で店の奥だと答えた。

俺は店員に短い感謝を告げると、奥にかかっていた衣装を手に取りレジへ急いだ。


「これくれ!わりぃが急いでんだ、このままでいいからよ!」


するとレジにいた店員は、一つ頷き返してこう言った。
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