あの子のために雪は降る
それから看護師の後をしばらく追いて行くと、ある病室の前で止まった。
そこが集中治療室なんだろう。

俺は看護師の開けてくれたドアをくぐると、目の前で呼吸器を付けたすずめを見つけた。

周りには点滴や心拍数を測る装置があり、ピッピッとすずめの心臓をカウントする音だけが響いていた。


「すずめ!」


俺はたまらず駆け寄ると、自分の手のひらよりも小さなすずめの手を握りしめた。


「お前…なんて格好してんだよ…。昨日まであんなに元気だったじゃねえか…。」


目の前の青白くなったすずめを見た俺は、昨日の元気だった姿をフラッシュバックさせていた。


出会った頃の不安そうなすずめ。

背中に嬉しそうにしがみつくすずめ。

スイッチに手が届かないと背伸びしているすずめ。

そして美味そうにハンバーガーを食べてサンタの話をするすずめ…。


俺は奥歯を噛みしめながら涙を必死に堪えていた。


(お前は今までずっと独りぼっちで…こんなちっこい手でよ…。
一体どれほどの幸せを掴んで来たってんだ?)


「なぁ…答えてくれよ、すずめ…。」


俺は自分でも気づかないうちに言葉を口に出していた。
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