あの子のために雪は降る
その時だった。

包み込むように握りしめていたすずめの手が、ピクリと動いたんだ!

俺は驚いた顔ですずめの目を見つめた。


「すずめ!サンタさんが来てくれたぞ!わかるか?」


少しでいいから目を開けてくれ!些細な事かもしれないが、それでちょっとでも喜んでくれるなら…。


俺は必死に祈っていた。


しかしすずめの反応は無く、俺はやるせない気持ちで肩を落とした。


「…ンタさん…いた。」

ん?今の何だ…?

俺はゆっくりと顔を上げた。


「サンタさん…。」


すずめの蚊の鳴くような小さな声が、今度ははっきりと聞こえた!

俺は目に溜まった涙をゴシゴシこすると、その場に元気良く立ち上がった。


「メリークリスマス!すずめちゃん!今日はいい子の君に素敵なプレゼントを持ってきたよ!」


そう言って精一杯の笑顔を見せた。

…声は震えてないか?
…セリフは間違えずに言えたか?

俺は今、ちゃんと笑えているのかよ?

俺は今にも泣き出しそうな自分を、拳を握りしめて必死に堪えた。
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