過去の秘箱


引っ越し当日、叔母ちゃんが迎えに来てくれた。


仕事先の社長の持ちアパート、一室貸して貰い、必要最低限の生活道具を購入するお金は、叔母ちゃんが貸してくれた、毎月少しずつの返済でいいからと言ってくれた。


その日…父は仕事で、家には詩織しかいなかった。


私は荷物をまとめ、詩織の部屋に……別れの挨拶に……。


詩織は背中向け、机に向かっていた。


「詩織、お姉ちゃんそろそろ行くよ、これ家事の事、色々書いたノートだから…もうすぐケータイ持つからね、何かあったら電話しておいでね」


詩織は黙ったまま、決して振り返らなかった。


< 121 / 221 >

この作品をシェア

pagetop