過去の秘箱
何から手をつけていいのか分からない状態の中で、取り敢えず、沙織は食器を洗い始めた。
洗濯機を回し、掃除機をかけ……お米も研いだ……簡単な料理でも作っておこうと冷蔵庫を開けた時………。
プンと酒の匂い…あの嫌な思い出の匂い……久し振り鼻腔をつくあの憎悪の匂い……。
その一瞬後、私は右肩に重みを感じた!
父の顔が肩に乗っている。
「何か作ってくれるのか?」
私の背中にへばりつく物体……物体から吐き出る臭い息……背筋が凍り身震いした。
やめて~~
父をすり抜け、バッグを持ち慌てて家を飛び出した。