過去の秘箱
沙織がアパートに着いた時には、もう夜の9時を過ぎていた。
マー君だ!
背中が見えた!
ちょうど部屋の鍵を閉め、帰りかけているところだった。
私は走って行き、その愛しい背中にしがみ付いた。
「マー君、もう帰ったかと思ったよ…」
きつくきつく抱き付いた。
マー君の背中は、私の涙を吸収した。
昔…おんぶしてくれた背中。
昔…自転車に乗せてくれた背中。
この背中がなかったら生きてこれなかったよ。
「サリーどうした?何かあった?」
マー君が優しい声で聞く。
「何でもない、何でもないけど…お願い、まだ帰らないで…もう少しだけ…側にいて……」
一度閉められた鍵が又開けられ、二人は部屋に戻った。
部屋のライト……一旦点されたが……暫くしてまた消えた……ままごと遊びの舞台セット……。