過去の秘箱
20 崩れてゆく城
あれから平穏な生活が戻ったかのように思えた……詩織の事を除けばの話。
詩織の事は気がかりだったが、今の沙織にはどうする事も出来ない…自分の事で精一杯だった。
沙織は真面目に工場で働いた、遅刻欠勤は一度もなく、上司逹にもとても可愛がられた。
仕事帰り、スーパーに寄り食料を買い込み夕飯の支度。
部活終えたマー君が、7時過ぎたらやって来る。
ずっとこの幸せな生活が続きますようにと、胸に手を合わせて祈った。
その日の献立は…マー君の好きな肉じゃがだった。
小さなテーブルで向かい合わせ……マー君がじゃがいもを口に入れようとした瞬間……。
幸せが……愛が……私の城が崩れてゆく…。
あの日を境に………。