過去の秘箱


マー君が倒れている。


お父さん…何て事、何て事してくれたのよ。


人を殴り、倒しておきながら、本人自身もハァーハァーと荒い息を出したかと思うと、その場でふらつきドサッと倒れた。


マー君が起き上がった、素早く上着を着て、スポーツバッグ持ち帰ろうとした。


「マー君、ごめん、ごめんなさい、許して……」


後ろから抱きしめながら言った。


殴られた顔の中……冷たい瞳でマー君は言った。


「今日は帰るよ、俺……」


振り払われた私は、行き場を無くし……追いかけようにも、足がすくんで動けない。


ドアは無情にもバタンと閉まった。


この狭い箱に……板前と鯉を残して……。



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