過去の秘箱


崩れてゆく城の中で、沙織も泣き崩れた。


幼い頃……家でよくままごと遊びをした。


沙織はお母さん役が大好きで、詩織は決まって子供の役だった。


後は、近所の子供逹がゲストで、お父さん役がいたり、お兄ちゃん、お姉ちゃん役がいたりした。


太陽が沈むと母が言う。


「もう暗くなるから、終わりにしなさいよ。皆も、お家に帰りなさいね」


どんなにいいところでも、この母の言葉で、ままごと遊びは終了された。


物事には終わりが来る。


遊びにも終わりが訪れる。


終了させた、この板前が憎い……振り返り、板前を見た。


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