過去の秘箱
その時、ケータイがメールの受信を知らせた。
マー君だ!
父がこっちを見て、じっと睨んだ。
黙って部屋から出て行こうとした瞬間、
「あの男か?」
ビクッ! 私の背中はスピーカーになった。
「お前、まだあんな男と付き合ってんのか?」
まだケータイ開いて見てないけど、文面も読んでないけど、多分、駅まで迎えに来て~って事だと思う。
マー君、了解だよ、今から急ぐからね~って早く返信したかった。
スピーカーが音を捉える。
「あの制服は、東校だな?……確か…中谷って名前だったな…俺が学校に電話してやるよ、俺の娘にまとわりつくなってよ…ちぇっ、いい加減にしろよ、学生の分際で、女の部屋に上がり込んで」
もう聞いてられない、これ以上の音は受け付けられないと、スピーカーを電源オフして、家を飛び出た。