過去の秘箱
家を出た沙織は、自転車置き場まで行き、ケータイを開いた。
サリーへ
あさってから試験なんで、今週は真っ直ぐ帰るよ、ごめんよ。
また連絡すっからさ、待っててくれ。
じゃ…また夜にメールする。 雅之
試験って……そうよね、高校生なんだもんね。
改めて思い知らされたマー君と私の立場の違い。
切ない現実が…チクリチクリと胸を刺す。
その時、さっき背中に受けた父の声が再生された。
俺が学校に電話してやる 俺が学校に電話…… 俺が学校に……… 俺が……………
困るよ、そんな事したら、マー君に迷惑かかるじゃん。
それに、マー君の親に知れたら、もう会えなくなってしまう。