過去の秘箱
正男がパイプカット済みで、子種が全くない事……沙織は知らなかった。
悶々とした闇の中で、沙織はもだえ苦しんだ。
どちらにも言えない。
誰にも言えない。
腹の子は親の心を知らず……この世に顔を出す事を目標に、1秒1秒、時と共に成長していく。
どちらにも言えないまま、病院にも行かないまま、歪んだ三角関係を、沙織は行き来した。
乳房が準備を始めたらしく、張ってきた。
体全体がむくんだ様になり、体重も少しずつ増えていく。
気持ちは、どうしよもなく焦ってはいたが、沙織はどうすればいいのかわからなかった。
闇夜の中で……解決法を手探りで必死に探す少女がここに一人。
それは錦鯉、沙織。