過去の秘箱


下着が赤く染められた日……正男は親戚の所に行き、家にはいなかった。

沙織と詩織は家で待機していた。


母親の蒸発に、一週間泣き続けた二人の目は、赤く腫れ上がり、視界も狭くなるくらいになっていた。


そんな時…家のトイレで見つけた……。


パンツについた赤い染み……。


生理がきた……どうしよう……不安だ…恐いよ…気持ち悪いよ……お腹も痛い……。


泣きそうになりながら沙織がトイレから出ると、そこに…か弱き妹がいた。


「お姉ちゃん、どうしたの?大丈夫?」


只ならない沙織の表情に、妹は心配気な目で姉を見つめている。


「何でもないよ、大丈夫だから」


沙織は一生懸命に平静を作った。


スーパーマーケットへ行ったついでに、こっそりと生理用品を買った沙織は、それを机の引き出しに隠した。


まるで悪事を働いているみたいに……。


初潮は祝い事ではなかった、この家では……。


それは、秘箱…悲箱…を持つ事になる哀しき前触れだった……。



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