過去の秘箱
4 まな板の上の鯉
母の行方がわからないまま、夏休みに終わりが来た。
姉妹に2学期が始まる。
家事は…自然と姉である沙織の役目となった。
学校が終わると家事をしなくてはならない沙織……テニスは断念、クラブは退部した。
母の典子は、両親を早くに亡くしてはいたが、たった一人の肉親、姉が一人いた。
姉妹にとっては叔母にあたる人。
唯一、頼れる存在であったが、地方に嫁いでいた為に、家事は手伝って貰えない、たまに電話で話すぐらい、言葉で励まして貰う程度の関係だった。
沙織はしっかりした子…沙織は我慢強い子…沙織は優しい子…。
下田家の母親役を懸命に務めた。
母親役だけでよかったのに…それだけで充分だったのに……。
何故に………。
この少女に苦しみのシャワーをかけるの?
我慢強く優しい性格は……悪い事ですか?
もっと我が儘で、我慢出来ない子だったら、運命は変わっていましたか?