過去の秘箱
それから叔母ちゃんは、ずっと泊まり掛けで側にいてくれ、詩織は毎日会いに来てくれた。
穏やかにゆっくりと時が流れる中で……今生きている、死ねなかったと言う事は……まだ考えなければならない事がある。
マー君のお母さんの言葉……愛するとは、相手の幸せを願う事……。
そうよね、心から外さなきゃいけない、マー君の存在を……忘れていくように努力しなきゃ……。
後一人の事は……考えるのも、思い出すのも嫌だった……避けては通れない事を知りながら……私の心は……あの男からまだ逃げている。
叔母ちゃんも詩織も口にしなかった、下田正男の事は……私も聞かなかった。
そんな病室生活の途中で………私は脱皮する事になる。