過去の秘箱
1 蒸発
ここはある中学校、6時間目が終わり廊下に生徒達が溢れ出す。
クラブに急ぐ者、廊下で群がっている者、中学生と言えど、皆、それぞれに自分を生きている。
下田沙織も、スクールバッグを持ち教室から出て来た。
「さおり~バイバ~イ」
「バイバ~イ」
廊下でたむろするクラスメートにニコッと笑みを送り、歩いて行く沙織。
中学1年、帰宅部。
成績は学年で常にトップクラスにいる。
小顔に透き通るようなきめ細かな肌、パッチリとした大きな瞳。
沙織は、いわゆる美人アイドル系のマスクを持つ少女だった。