過去の秘箱
33 その後……


時は流れ……沙織21歳、詩織19歳になった。


もと板前は、ひまわり園で車イス生活……酒と性欲はすっかり抜けきり、肌は白くなり、センターの隅で物思いに耽ている。



愛に生きた母、典子は浩二と共に車整備会社で仕事をしている……二人娘とはまだ再会していない。


詩織はキャバクラに勤め、昼間は父に会いにひまわり園に通う……最近、新しい彼氏が出来たようだ。


沙織は、叔母の家から真面目に仕事に通っていた……こちらも、付き合い始めて間もない彼が………。


沙織の勤める会社の営業社員……大卒で真面目な男……彼からのモーションにより、この恋は始まった。


マー君以来の久し振りの恋心だった。


過去の忌まわしい出来事がまるで夢だったかのように……沙織の顔は、ごく普通の恋する21歳になっていた。


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