過去の秘箱


沙織が母親に言った。


「きれいなお姉ちゃん達…私も大人になったら、あんなの着たいな」


母親の典子が言った。


「二十歳になったらね、買ってあげるからね」


「うん!」


横で、詩織が何故かすねている。


「お姉ちゃんの方が先に大きくなるから、私はまた……どうせお姉ちゃんのお古しか着れないもん……」


母、典子が優しくなだめた。


「二十歳の振り袖はね、お姉ちゃんのお古じゃなくて、詩織にも新しいのを買ってあげるからね」


「ほんと?やったぁ~あのふわふわ綿菓子も忘れないでよ」


「はいはい」


詩織の機嫌は戻り、笑顔の花が咲いた。


   その時だ!


沙織は足を滑らせて、境内の階段からまっ逆さまに落ちて行った。


  うわぁ~助けて~



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