過去の秘箱
5  板前さんと錦鯉


詩織が自然学校から帰って来た。


正男の実の娘であり、私の妹。


親が帰って来たような思い、強い味方が戻って来たような思い……2歳下の詩織に、すがるようなこんな思いを抱いたのは、この時が初めてだった。


詩織がいれば大丈夫。


お父さんは今までのお父さんに戻るだろう、私さえ黙っていれば……私さえ……。


3人の生活が戻った。


が…詩織はまだ小学生…沙織よりは早く寝る。


沙織はなかなかベッドには入らなかった。


父親が寝たのを見届けてからでなくては、どうしても眠れなかった。


詩織が帰って来てからも、ずっと夜明け近くまで勉強した。




< 37 / 221 >

この作品をシェア

pagetop