過去の秘箱
5 板前さんと錦鯉
詩織が自然学校から帰って来た。
正男の実の娘であり、私の妹。
親が帰って来たような思い、強い味方が戻って来たような思い……2歳下の詩織に、すがるようなこんな思いを抱いたのは、この時が初めてだった。
詩織がいれば大丈夫。
お父さんは今までのお父さんに戻るだろう、私さえ黙っていれば……私さえ……。
3人の生活が戻った。
が…詩織はまだ小学生…沙織よりは早く寝る。
沙織はなかなかベッドには入らなかった。
父親が寝たのを見届けてからでなくては、どうしても眠れなかった。
詩織が帰って来てからも、ずっと夜明け近くまで勉強した。