過去の秘箱


詩織が可愛いバッグを肩からかけて、ニコニコ笑顔で私の前に来た。


「じゃ、お姉ちゃん行ってくるね。明日の夕方までには帰るから」


「行ってらっしゃい」


笑顔で送り出した私は、その場にワナワナと座り込んでしまった。


でも、でも…ぐずぐずしてる暇なんかない事に気付いた。


早く、早く家を出ないと、お父さんが帰って来る。


でも、何処にいけばいいの?


仲のいい友達は美雪だけ、他に泊めて…なんて言える友達はいない。


おばあちゃんもおじいちゃんもいないし、恵子叔母ちゃんの家は遠過ぎる……行くにしても電車代が凄くかかるし、それに……何で来たのか、理由聞かれるに違いない……。



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