過去の秘箱


歩いていると、誰も住んでないような古びた空き家を見つけた。


朽ちた木の隙間から中に入れそうだった。


ここで明日になるまで過ごすしかない…。


極限の寂しさと哀しさと寒さに……怖さなんかは飛んでしまっていて何処にもなかった。

暗く冷たい廃家で、膝を抱える沙織。


ひびの入った窓ガラスから、白い粉雪が舞っているのが見える。


その周辺の家からか…聞こえてきた…家族団らんでクリスマスを楽しんでいるかの声が……凍りついた耳が尚更凍る。



< 48 / 221 >

この作品をシェア

pagetop