過去の秘箱
「詩織、大丈夫か?」
嫌な声が耳に入った。
私は背を向けたまま答える。
「大丈夫じゃない、寝かせてほしい……」
詩織は家を出て行った。
恐い…どうしよう、この家には、今、お父さんと二人きり……。
これじゃ、昨日、あんな寒いとこで時間過ごした意味がない……。
今の私は病気なんだよ、こんな日は、きっと何もしないよね、お父さん…。
熱で体が震えている、恐さで心も震えていた。
父は向こうの部屋にいる。
こっちにはやって来なかった。
当然よね。
うとうとしかけた時、あの襖の開く音がした。