過去の秘箱
8 それぞれの願い
年が明けた。
母のいない新年だ…。
おせち料理はスーパーで買った。
三人で初詣に出掛ける。
振り袖を着たお姉さん達とすれ違った。
詩織が羨ましそうに見ていた。
私は妹の手を強く握る。
可哀想に…詩織は甘えん坊で淋しがりや…母が消えても、こんなに小さな手で一生懸命生きてるんだ…私が守ってあげなきゃ、私が……。
「詩織、お姉ちゃんがさ、あんたが二十歳になったら、絶対にあんな着物買ってあげるよ」
二人握られた手には…愛が流れていた。