過去の秘箱
あのストラップなんだけど……さおりって…さおりって…何で、私の名前知っていた訳?渡した手紙にも、下田しか書いていなかったのに……。


帰りの電車で、彼に貰った紙袋をしっかりと胸に抱いた私の脳はパニックになっていた。


その時少し風邪気味だったせいか、家に着くなり身体中が熱くなり、次に寒気に襲われた私は、ベッドに潜り込んだ。


引っ越し先の家は2階建て、1階はキッチンと居間、そして父の部屋、2階には2つの部屋があり、それぞれに私と詩織は別々に部屋を持つ事になった。


二段ベッドはそれぞれに離され、個々の部屋に………。


父は、もう詩織に遠慮する事もなく、いつでも好きな時に、私の部屋にやって来た。


たかが数分…30分もかからない…その時間さえ我慢すれば、父の機嫌も良かったし、全てが上手くいくから……。


沙織は美しく素直な錦鯉………。


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