過去の秘箱


朝の光がキラキラ煌めいて、空気の澄みきった朝だった。


自転車の後ろに横乗りした私は、彼に触れる事が恥ずかしくて……持つ所がなくて不安定……熱のせいで体もフラフラ……今にも自転車から落ちそうだった。


「俺につかまれよ」


制服の腰の部分をそっとつかんだ私……。


この背中に…あの時おんぶされたんだ。


思いもしなかった展開に、戸惑うだけの、私がいた。


何が話さなくちゃ……そうだ…。


「昨日さ、お返しありがと……でも私だけ、皆と違っていたから……何でかなぁ~って…」


時間が少し空いてから…彼が言った。



< 75 / 221 >

この作品をシェア

pagetop