過去の秘箱
彼と私は、自転車を押しながら駅まで歩いた。
私は歩幅を狭めて、わざとゆっくりゆっくりと歩く。
早く駅なんかに着きたくない…いっそのこと駅なんか無くなってしまえばいいのに……。
「ケータイ持ったら、中谷君に一番にメールするからね」
「うん、待ってるよ」
中谷君はあの日に言ってくれた、下田の事が好きと……でも私はまだ言葉にして言えてなかったんだ…好きと言う言葉……。
言おう、今、言おう、勇気出して言わなきゃ……。
ついに着いてしまった、憎たらしい駅に……。