過去の秘箱


ハーハーと荒い息をした正男の目は、血走っていた。


暴力からやっと解放された沙織……やっと正男が正気に戻ったかのように思えた時…。


「ケータイ貸せ!ケータイ出せ!」


窮地に追い込まれた沙織にはなす術がなかった。


そんな…どうしよう……。


「ケータイ持ち出してから、おかしくなってきたんだ、早く出せ!」


途方に暮れている沙織から、正男は無理矢理バッグをもぎ取った。


と逆さまにして、全ての持ち物を撒き散らした。


あっ!ケータイが!


メール見られたら!


正男がケータイを開いた、着信、発信履歴見る事もなく、メールボックスを開く事もなく……待ち受け画面の男を見ただけで!


   パキッ!



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