ね、先生。
16歳の夏
あの日。

涙が枯れる事はなかったけど、少し落ち着いた所で私は、人目につかないように更衣室に戻り、それから帰宅した。

家に着いて、お母さんから逃げるように玄関からお風呂へと直行し、腫れた目を隠すように何度も顔を洗った。



 ・・・ちゃぽん。


蛇口に溜まった雫が湯船に落ちる。

自分の涙を見てるようで、また泣けてくる。


右手で曇ったガラスを拭い、自分の顔をみつめる。



「・・・変な顔。」



完全に、自分の気持ちは先生にバレたはず・・・。


あんな別れ方して、

明日からはどんな顔して逢えばいい?

もう、

お昼ご飯も一緒に食べることも、

一緒にふざける事も、

頭を撫でてくれる事も、



もう、、、

葵って呼んではくれない・・よね?

・・・先生・・・。
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