ね、先生。
行きの車の中では、

特に何も会話の無かった、先生と私と沢田くんだった。


だけど、

帰りは車に乗り込むと、沢田くんが私に話し始めた。



「・・・桜井さん。良かったね。」

「・・・ぇ?」

「さっき、先生に聞いた。」

「・・・何を?」


私がバックミラーへと視線を向けると、先生と視線がぶつかった。

そして、先生が今度は話し始める。


「オレがお前のこと好きだって伝えたって言ったんだよ。」

「えぇ?!」


そして、沢田くんがゆっくりとした口調で話し始めた。


「・・・最初、桜井さんが下駄箱で倒れた時。
 慌てて桜井さんのことを抱きかかえた先生を見て、すぐにピーンときたんだ。 先生が桜井さんに好意を持ってるって。 そして、桜井さんにも好きな人がいると知ってたオレは、二人が互いに惹かれあってることに気付いた。

 ・・・邪魔。
 するつもりはなかったんだ。
 
 だけど、先生からしてみれば俺達なんて子供で、本気になんか相手にしてるわけないと思ってて・・・。 気付けば、オレは先生に敵意を感じてた。 でもそれは間違ってて、昨日桜井さんを探しに行った先生を見て、本気なんだなって思った。」

「・・・沢田くん。」

「邪魔なんかしないよ。 もちろん、他の人に言ったりもしない。
 ・・・良かったね。 本当に。」

「・・・ありがとう。」


会話が終わる頃、

私たちを乗せた車が、ちょうど学校へと着いた―。
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