ね、先生。
「はいっ。」
先生から差し出された、缶のオレンジジュースを私は受け取った。
「ありがとう。」
車を数時間走らせ、私達は海へと来ていた。
波打ち際から少し離れた岩場に腰を下ろし、海を見渡すと、水平線がキラキラと眩しかった。
「何か今日は暑くって、泳げそうな感じだなっ。 水着持ってくれば良かった?」
そういいながら、先生は缶コーヒーのフタを開けた。
「あっ。
近くに水族館があるみたいでさぁ、午後はそこに行こうかっ。」
「・・・うん。」
私もゆっくりと缶ジュースのフタを開け、口へと運んだ。
30分ぐらい海を眺めて、砂浜を歩き、私達は近くのシーフードレストランへと移動し、食事を終えてから、私達は水族館へと向かった。
水族館の中を道しるべのとおり進んでいく。
「わぁー!!
・・・か、かわいぃーー!!!」
ハンドウイルカの親子を水槽のガラス越しに眺め、はしゃいだ私に
「くすっ。」
先生は笑う。
「・・え? 何がおかしいのッ?!」
「いや。 くすっ。
今日、やぁ~っと葵の笑顔が見れたと思ってねッ。」
「えっ?!」
「なんかさぁ、今日というか、最近元気なかっただろ? 葵。」
「・・・せ、せんせ・・ぃ。」
「しッ。そ、その呼び方はダメダロッ!
あ! もう一頭きたぞッ! イルカが!!」
そう言って、先生はイルカを指差した。
その指先へと私は視線を移し、泳いできたイルカを見てから、ガラスに映った自分と先生を見る―。
無理した、今日の私の格好。
落ち着いた、いつもの先生。
ね、周りにはどう見られてるの?
親子はないと思うけど、歳の離れた兄弟?いとこ?恋人?
それとも・・・先生と生徒?