ね、先生。
 
「・・・じゃあ、もう少し・・・。」


先生は私のわがままを聞いてくれる。




空が薄暗くなり、

人影の疎らな海岸で、

私たちは ずっと 海を眺めてた。




「・・・そろそろ・・帰ろう。」


もう何度目だろう?

先生が私に聞いたのは。



返事を返さない私に呆れつつ、「ふぅー・・・」先生は大きな溜息を吐き捨てた。

その時、

先生のズボンの中にあった携帯が震える―。


穏やかな波の音しか聞こえない静かな海岸で、バイブレーターの音は、隠す間も無く私にまで知らせてくれる。

先生はポケットへと手を入れ、震える携帯を取り出す。


携帯を開き、

先生が電話に出ようとした時、

私は、

その携帯を先生から奪い取った―。
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