ね、先生。
 
「何を・・そんなに思い詰めてんのっ?」


カタカタと震える私の傍に先生は近付き、私の肩を両手で押さえた。




「・・・せ、先生に・・」


私がゆっくりと重い口を開いた時、


「・・・分かるわけが無いよ。」


先生は優しい口調で


「ーんっ?何が?」


私に訊いてくる。


「・・・ラリーするのも一人では出来ないし、ペアになってくれる人もいない。
 何もかも、すれば誤解されて、、、どうして良いのかさえ分からない・・・。
 もう、テニス部から逃げたい・・・・・・。」


自分でもいっぱいいっぱいだった・・・。

一人で部活に参加する寂しさ。簡単に言えば、美加とは関わりたくない。
それをどうオブラートに包んで先生に伝えるか?、16歳の私にはとても難しくって、考えれば考えるほど、美加の睨み付ける顔が鮮明に蘇えってくる。

そして、

私の体は、より激しく震える。



「・・・葵。逃げるな、逃げんなよッ。」


先生はそう言うと、私の肩から手を離す。

でも、

その放した手は先生の元へは帰らず、

私の体をゆっくりと、

ぎゅーっと抱きしめてくれた・・・。
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