ただ風のように


「コーチ、何ですか?」


「夏々海、バスケはいつから?」


唐突な質問に驚いたけど私は素直に答えた。


「本格的には中学からです」


「バスケは誰に?」


「兄と中学の先生です。先生はバスケ、専門じゃなかったみたいですけど、すごく熱心な先生でバスケについて勉強してくれていろんな試合に連れていってもらいました」


私はありのままを話した。


「いろんな試合って?」


「夏は高校の試合とか冬はプロの試合です。高校の試合はほとんど全部で都合が良い人は連れていってもらってました」


「そう。あなたの動きは誰かに教わったわけじゃないの?」


「そうですね。田舎の公立中学なので外部コーチを呼べる訳でもなかったので部員のほとんどは試合から学んだり、自分達で考えてました。兄とはよく勝負してましたけど」


私は中学時代を思い出しながら聞かれたことに不足がないように話した。


「そっか。試合観たのは夏々海も同じ?」


「私も同じです。試合を観に行ったあと学校に戻ってビデオを見ながら使えそうな技を練習してました。先生が教えてくれたことは『ボールを持ったらゴールを見ろ』だけでしたから」


私は笑顔でそう言った。


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