ただ風のように
「兄貴、ちょっと待て」
海頼先輩はソファーから飛び降りて渚さんを捕まえた。
「可愛い弟よ。君達は健全な高校生だ。今、見たことは誰にも言わないから心置きなく続けなさい」
「兄貴、激しく誤解してるから言うぞ。俺は、ケガしてるから包帯巻いてやるって言ってんのに夏々海が逃げるからこうやってるだけで、兄貴が考えてるようなことは何もない」
「いや、いいんだ。そんなことを言わなくても分かってるよ」
「だぁかぁらぁ」
「兄さん、またですか?」
海頼先輩が渚さんと言い争っているとお約束のように岬さんが現れた。
「岬兄ぃ。良いところに来てくれた。頼むから渚兄ぃ連れてってくれ」
「そのつもりで来た。さて、兄さん行きますか」
岬さんは引きずるように渚さんを連れて部屋から出ていった。