ただ風のように
洞窟の地面はさっきまで水があったように濡れていた。
先輩は慣れたように前に進んでいるが時折、振り返っては私を待ってくれていた。
洞窟の入り口が見えなくなっても洞窟の中が完全な暗闇になっていないことに私は気付いた。
「先輩」
「どうした?」
声が反響している。
「入り口も出口も見えないのに明るいのはどうしてなんでしょう?」
「俺も最初は不思議に思ったよ。もう少し行くと答えがある」
そう言って先輩はまた歩き始めた。私も黙ってあとに続いた。
それから5分くらい歩いて先輩は足を止めた。私はその光景に驚いた。