ただ風のように
「これがさっきの答え」
先輩は優しく言った。私はあまりにも非現実的な光景に何も言えなかった。
そこは大きなホールのように広い空間になっていた。周りには艶と光沢のある岩が光っていた。上を見上げるといくつかの小さな穴の隙間から光が射し込んでいて、その光が岩に反射しているのだ。
「すごいよね。あの光が入ってくるのも岩が海水で削られたのも全部、偶然でこんな空間ができたんだ」
先輩が呆気にとられている私にそう言った。
「こんな場所があるなんて……」
「俺も驚いた。時間限定の特別空間。あと1時間しないうちにこの中は真っ暗になるんだ」