ただ風のように
「そうなんですか?」
「うん。1日、2回この中に日が射すんだけど2回目はこの中は水が満ちてる。それはそれで綺麗だし見せたいけどまだ泳ぐには季節が早すぎるしね」
先輩はいたずらっぽく笑った。
「先輩は何度もここに来てるんですね。まるでここに住んでるみたいに詳しいですし」
「まぁ、嫌なことがある度にここに来てたしその度にいろんな発見があって楽しかったしね」
先輩の目が哀しさを物語っていることに私は気付いた。なんて声をかければ良いのか分からなかった。
「そろそろ暗くなってくるからここを出ようか。次の場所に行こう」
「あ、はい」
そう言った先輩の目はいつもと同じに戻っていた。