ただ風のように


先輩がバイクに乗り、私が後ろに乗る。先輩は1度振り返って確認してからバイクを発進させるルーティーンが決まりつつあった。


先輩はどんどんスピードを上げた。私は言われていた通りに先輩に掴まっている。


景色はどんどん変わっていくけどバイクに乗っている私達だけは変わらない。


風になった気分だった。


世界で自分達だけが変わらない。そんなことはあるはずがない。止まっている人から見れば私達は一瞬で見えなくなる。


その人からすれば景色が変わったということで私達もまた変わった景色の1つということ。


だけど風なら、誰にも見えない風なら景色を変えることがないから。自分達も変わらずにいることができる。


だからせめて今だけは変わらない存在でいたい。


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