ただ風のように
「次はここ」
先輩がバイクを止めた場所は砂浜の目の前だった。
「ここですか?」
「うん。ここは私有地で遊泳禁止だから夏でも誰も来ないんだ。でもここの持ち主って俺の知り合いなの。だからフリーパスで遊び放題なんだよね」
先輩は不思議そうに海を見つめる私に教えてくれた。
「じゃあ、こんなに良い景色を独り占めなんですね」
「まぁね。夏は西高のみんなで砂浜ダッシュに来るけどね。知り合いの家、すぐそこなんだ。久しぶりに挨拶に行ってもいいかな?」
「いいですよ」
「ありがとう。君も来なよ。良い人達だから」
私は頷き、先輩の後ろを着いていった。