ただ風のように
「こんにちは。爺ちゃんいる?」
「あ?あぁ、海頼か。久しぶりじゃな。入りなさい。おや、おなご連れか。お嬢さんも入りなさい」
中から、お爺さんの声が聞こえてきた。
「とりあえず、入ろうか」
「お邪魔します」
先輩のあとに続いて家の中に入りながら私はそう言った。
靴を脱いで部屋に上がるとお爺さんとお婆さんが座って、お茶を飲んでいた。
「爺ちゃん、婆ちゃん。久しぶりだね。元気だった?」
先輩は笑顔で話しかけた。
「ええ、元気よ。海頼も元気そうねぇ。あら、そのお嬢さんはどなた?」
「別の高校の後輩だよ。爺ちゃんと婆ちゃんに逢わせたくてさ」
「藤原夏々海です」
先輩がそう言ったあと私は名前を言って頭を下げた。