ただ風のように
「この爺ちゃん達は世の中の常識じゃ計り知れない力を持ってるんだ。俺はその力で何度も助けてもらった」
「夏々海さん。お主は揺れとる。過去のことや家族のことに縛られとる」
海頼先輩が私に説明してくれたあとにお爺さんが私に言った。
「分かるんですか!?」
「ええ。あなたがそのことで自分を傷つけていることもね」
お婆さんが優しく悲しそうにそう言った。
「なんとかしてやれない?」
「できない訳がなかろう。それよりお主ら、昼は食べたのか?」
お爺さんが海頼先輩に聞いた。
「まだだよ。このあと、コンビニに行くつもりだったし」
「ちと遅い時間じゃが、儂らと一緒に食べるか。もう2時になるぞ」
「いいの?急に押し掛けたのに悪いよ」
「毎日、年寄り2人の変わらぬ生活じゃ。急に来てくれた方が刺激があって楽しいんじゃよ。一緒に食べていけ」
お爺さんは優しい顔をした。