ただ風のように
「じゃあその言葉に甘えるよ」
先輩が頭を下げたので私もそれに続いて頭を下げた。
それを見てお婆さんは立ち上がり隣の部屋に消えていった。
「海頼、石の調子はどうじゃ?」
「大分、良くなったよ。爺ちゃん達のおかげだね」
「そうか。良きことじゃ。今日も持っとるか?」
「あぁ、うん。ほら」
先輩はそう言って上着のポケットから小さな袋を取り出した。
「それ、何ですか?」
「これは、天然石。はじめて爺ちゃん達に逢ったときにもらったんだ」
先輩が袋から取り出したのは青色の石だった。
「綺麗な石ですね」
「俺の誕生石なんだ。ブルークォーツっていうんだって。ね、爺ちゃん」
「あぁ。石の言葉は生命の誕生というてな、嫌な思い出を捨て去る効果のある石じゃ」