ただ風のように
「次はどこですか?」
私はバイクに乗りながら海頼先輩に聞いた。
「俺が1番、気に入ってる場所」
先輩はそう言ってバイクを走らせた。それ以上は私も何も言わなかった。
どれくらい走っただろうか?長い時間、走ったような気もするしほんの少しの時間だった気もする。
先輩はバイクを止めた。
「ここが俺の1番の場所」
そこは普通の海沿いの道だった。先輩は防波堤の上に腰を下ろした。
「ここ、ですか?」
「うん。君もこっちに座れば?少しだけ目を閉じてて」
私は先輩の隣に座り、言われた通りに目を閉じた。
「良いって言うまで閉じてて」
私は頷いた。それから何秒だったのか何分だったのか分からないけど私は目を閉じ続けた。
「いいよ」