ただ風のように
私は目を開いて先輩を見た。先輩は海を指差していて私はその光景に感嘆の息をもらした。
太陽が海に向かって少しずつ動いていた。太陽は海や空を橙色に染めながら海に沈んでいた。
私が何も言えずにいると先輩が立ち上がり口を開いた。
「綺麗だよね」
「……はい」
「俺さ、この道がすごい好きなんだ。海沿いをずっと真っ直ぐに走っていける。風みたいに」
私は先輩を見上げた。
「風ですか?」
「うん。全てが変わっていく中で唯一、変わらないものは風だと思うんだ。透明で景色を邪魔しない。俺は風になりたい」