ただ風のように
「遊汰先輩、どうしてそんなに詳しいんですか?」
「俺もその場にいたんだ。兄貴とかとバスケがすげー上手い中学生がいるって聞いてさ。初めて観に行った日に海頼がそういう目にあっててさ。それを助けたのが俺らなんだ」
偶然にしてはできすぎてる気がするけど、遊汰先輩は細かいところを話してくれなかったから信じることにした。
「そうだったんですか。海頼先輩ってなんか寂しい目してますよね」
「あいつさその事件以来、人のこと信じてないみたい。ってか信じたいけど信じられないみたいな感じなんだろうな。俺にはいろいろ話すけど、他の奴にはあんまり……」
そこで遊汰先輩の声が途切れた。
「あんまり、なんですか?」
「いや、なんで夏々海ちゃんには中学のころのこと話せたんだ?」