ただ風のように
「あ、あぁ」
俺はこの時、雅サンが微かに笑ったことに気付かなかった。
後半戦は相手チームからの攻撃で始まった。
ゴール下の競り合いで俺がフォローに入ったとき、相手チームの1人が肘を張って腕を振り回した。
その肘が俺の頭に思いっきり当たり、俺はその場に倒れこんだ。
レフェリータイムアウトになり、試合は一旦止まった。
レフェリーによって、俺は抱き起こされたが俺が倒れていたところには血が溜まっていて、俺の頭からは血が流れていた。
「おい、てめぇ!!さっきから海頼ばっかり狙いやがって、ふざけんな!!」
「雅サン!!大丈夫すから。試合続けましょう」
俺は朦朧とする頭で相手に掴みかかり殴ろうとする雅サンを止めた。
「大丈夫じゃねぇだろ!!試合は中止だ。レフェリー!!」
雅サンはレフェリーに試合を止めるように言った。
「雅サン!!これは大事な試合なんでしょ!!レフェリー、続けましょう」