ただ風のように
「……嘘だ」
「嘘じゃねぇよ。オーナーから頼まれたんだ。お前が勝ちまくって商売にならないから潰してくれってさ」
「けど、俺をここに連れてきたのはオーナーと雅サンじゃないですか!!」
「そうだ。お前はよく働いてくれたよ。おかげでここは裏でも表でも名が知れるくらいでかくなった。だけどもう、お前は用済みだ」
「そんな……うっ……」
急に俺の視界が揺れた。
「今ごろ、頭に受けたダメージが出てきたか。脳震盪だよ。血がでるくらい強く当てられてんだからな」
俺は視界の揺れに耐えきれず、その場にうずくまった。
「1年間、楽しかったよ。海頼」
雅サンはそう言い残して、オーナーと選手控え室に消えていった。
それと同時に観客として俺達のチームに賭けていた人が何人か、フェンスを越えコートに入ってきた。